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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

集合住宅、これからの維持管理

大阪市で暮らす人のおよそ7割が集合住宅に住んでいます(平成30年住宅・土地統計調査。昭和30年代に登場し、都市居住の中心的存在となった集合住宅ですが、快適な住まいである一方、維持管理の難しさという課題を抱えています。

 

あんじゅ45号の特集「マンションの未来を考える」でご登場いただいた関川華さんに現在の視点で集合住宅のこれからの維持管理やそのあり方について語っていただきました。

 

 

「フランスの住宅管理人は高齢者の見守りなど、コミュニティにかかわる人材として認識され、若い人にも職業として注目されつつあります」と関川さん。フランスの集合住宅管理について研究を続けている。

関川 華(せきかわ はな)さん (近畿大学建築学部建築学科准教授)
フランスの集合住宅の管理体制について研究。近畿大学都市住宅研究室では住まいやまちづくりに関するあらゆるテーマを扱う。2022年より大阪市立住まい情報センター事業企画アドバイザー。
 

 

 維持管理とコミュニティづくり

 

集合住宅の維持管理におけるルール作りなどに関心があり、研究を続けている関川さんによると、日本の集合住宅におけるルールは1960年代ころから形作られてきたという。

 

「所有者や住民が全員で協力して管理するというのが、日本における区分所有法の考え方の基本」だと関川さん。「全員が維持管理の専門家ではないし、管理に関わる時間や金銭的な余裕がない人もいる。住民全員が同じ力量で管理にたずさわることはできないことも踏まえて、できる範囲で、一緒に掃除や緑地整備などをする。お互いの顔が見えて、コミュニティづくりにつながるので、少しでも管理にかかわるのがよい」と考えている。

 

 

 維持管理はとにかく面倒なことだと知る

 

所有者あるいは居住者として、少しは集合住宅の維持管理にたずさわるべきだとわかっていても、やはり面倒だと考える人のほうが多いのではないだろうか。そう尋ねてみると、「面倒くさいですよね。だからこそマンションも戸建も維持管理が面倒なものだとわかった上で購入するのがいいと思います」という答えが返ってきた。

 

一方で、2001(平成13)年にはマンション管理士という国家資格が誕生するなど、集合住宅の維持管理のプロフェッショナルを育てる動きも。「第三者を管理者として取り入れようという動きもある。今後は、所有者や居住者など集合住宅にかかわる人がたずさわれる管理と、資産管理のプロによる徹底した管理の二重構造が必要になるのではないか。次世代に建築や空間を継承するには、居住者の管理だけでなく、プロによる厳しい管理体制も必要です」と話す。

 

 

住まいにもっと関心を向ける

 

集合住宅に住まう上で維持管理は重要だが、無関心な人が多いと関川さんは感じている。「高校の家庭科の教科書には区分所有法のことや、空き家問題についても触れられている。でも高校では学んでいないという学生もいる。教員の育成も含めて、住教育に力を入れられる授業開発ができたら」と考えているそう。

 

関川さんは「いまの学生たちは少子化の中で生まれて、将来は親と子どもの面倒を見て、親の買った住宅の管理も背負う可能性がある。管理を支える専門家の存在が将来彼らの背負うものを少しでも減らせるのではないか。既存の住まいを社会でどのように循環させるのかについて、誰もが考えるべきでしょう。自己責任、所有者責任だけを言う時代とはさよならして、もう少し先進的な考え方で住宅管理をやっていけたら」と思いを語ってくれた。

 

維持管理に興味を持つ若い世代を育成

  

今回、関川さんのお話を一緒に聞いた都市住宅研究室の学生3人。関川さんの授業「居住管理論」を受け、維持管理に興味を持ったそう。維持管理に興味をもったきっかけや今日の感想を教えてもらいました。

 

小田純平(おだじゅんぺい)さん(右)「居住管理論の講義を通して印象に残った。管理を通したコミュニティづくりがすごく大事だと思った。もし自分がマンションに住むなら、コミュニティがないところよりもすでにある中に入っていきたいと思った」

 

渡邊紗衣(わたなべさえ)さん(中)「居住価値と社会的価値。住む人の価値と社会から求められている価値が違う。どちらも大切。社会的にも価値があるようにしないと快適な住まいができないと言われて、どっちも大事にしたいのに難しいが、興味を持った」

 

堀井遥(ほりいはるか)さん(左)「住文化論で興味を持った。関川先生のお話で、今ある住宅がどういう流れでできてきたのか。例えば、長屋のはだか貸しの制度の話が一番印象的だった。現代でもはだか貸しのシステムがSI住宅と繋がっていて、今でもその仕組みが必要とされているんだなと興味深かったことがきかっけ。間取りだけではなく、管理の面でも居住価値を高めることも重要だと知った」

 

 

近畿大学建築学部棟