時の記念日展示イベント「VIVA‼時の記念日」を開催しました
6月10日の「時の記念日」にあわせて、西洋から日本に入ってきた幕末から昭和初期の時計を中心に100点近くを展示しました。場所は近代の常設展示室とミュージアムロビー、展示期間は6月8日から7月8日の1か月間でした。
居留地と商館時計
今昔館の近代常設展示室には、慶応4(1868)年の大阪開港にともない、外国人の居住地として設けられた「川口居留地」の模型があり、そのなかに初期に時計を輸入販売したスイスのファブルブラント商会の建物があります。
当時、横浜や川口など、居留地に住む外国人から、西欧の建築・土木技術や工業技術とともに、西洋の生活様式や文化が伝わりました。これにあわせて、西洋の時間の概念が持ち込まれ、時間を現す道具としての時計が輸入されるようになりました。
元治元年(1864)年、横浜の外国人居留地では、日本と国交を樹立したスイスから時計を輸入販売する商館(商社)がフランソワ・ぺルゴによって設立され、スイスからの時計輸入のほか、日本人の好みを研究した時計の開発や、日本での製造もあわせて行うようになります。
ペルゴの協力のもと、スイスの時計商人のファブルブラントも同年に横浜の居留地に商館を開設し、販路拡大のために川口居留地にも商館を構えたのがこの模型にある商館です。海外からの輸入販売に携わる商館が、自館のマークなどを刻印し販売していたものは、「商館時計」と呼ばれました。
古時計の展示
当時の輸入時計は、大きな盤にローマ字が並び、手巻きゼンマイでバネを回すいわゆる懐中時計です。今回の企画には古時計クラブの方々にご協力をいただきました。
古時計クラブは時計愛好家が集うクラブとして40年前から活動を続ける団体です。時計の愛好家・収集家だけではなく、アンティーク時計の歴史研究や機械設計の側面からの研究を進める専門家、設計・修理を手掛ける時計士が在籍されています。展示した時計は、古時計クラブの皆さんから出陳していただいたものでした。
希少価値の高い懐中時計や、掛け時計、仕掛け時計、腕時計、アンティーク時計を現代仕様にアレンジしたものまで、幅広い展示となりました。時の記念日のアンティークポスターも注目を集めました。展示解説のなかに二次元バーコードを示してクイズを楽しめるようにしたことも新しい試みでした。
ワークショップと講演会
時の記念日には、展示に関連して、古時計クラブにご協力をいただいてワークショップと講演会を行いました。「商館時計に触れてみよう」と題したワークショップでは、実際の商館時計を使って扱い方や仕組みなどを学びました。懐かしさに立ち寄る方、格好良さに惹かれる若者、機械の仕組みに目を輝かせた子供たちが参加しました。
講演会「商館時計の魅力」と「修理の面白さ」では、日本における時計の歴史と、講師の大川展功(おおかわのぶよし)さんのアンティーク時計との出会いなどのエピソードを加えたお話を、時計修理に携わる西村建二(にしむらけんじ)さんからは時計の仕組みや時計修理の魅力を具体的な事例を挙げながらお話いただきました。
参加者の中からは、「修理が必要な時計があるがどうすればいいかわからなかった」という声があがり、関心の高さが伺えました。