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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

新収蔵品紹介 秋の行楽 松茸狩り

【図1】「松茸山」
五井金水筆 
絹本墨画淡彩    
年代不詳 当館蔵

 

秋の味覚「松茸」にちなんで、五井金水による「松茸山」を紹介します【図1】。絵の上部には山に分け入って松茸狩りをする男たち、手前には包丁や鍋を並べて、採れたての松茸をその場で調理をする様子、中央には葭簀の覆いに緋毛氈を敷き、重箱や酒を広げ、飲食する男女が描かれています【図2】。

 

【図2】(右下)松茸を調理する様子(左上)松茸を飲食する男女

 

さらに「松茸山」の表具の裂(生地)に注目すると、風袋と一文字は松葉の模様で、画題にちなんで仕立てている点も楽しい趣向です【図3】。

 

【図3】松葉模様の表具

 

この絵を描いた五井金水(1879︲1942)は明治後期から昭和初期にかけて大阪で活躍しました。大阪くらしの今昔館は2023年、金水の遺族のもとに保管されていたコレクション40件の寄贈を受け、展覧会を開催しました。この「松茸山」はこれらの資料群をさらに充実させるべく、新たに収集したものです。

 

「松茸山」という画題は、江戸時代の大坂の様子を伝える地誌『摂津名所図会』に、「金竜寺山の松茸狩」として描かれています【図4】。また、金水のもとに伝来した下絵や売立目録の記録から金水の大師匠である西山芳園がほぼ同じ構図で描いていることが判明しました。秋の行楽の画題として「松茸狩」の絵が大阪の人々に親しまれ、受け継がれていったことがうかがえます。

  

 

【図4】「金竜寺山の松茸狩」『摂津名所図会』より

 

服部 麻衣(大阪くらしの今昔館学芸員)