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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

収蔵品紹介 福を招く正月の掛け軸 「七福集合図」

「七福集合図」森一鳳筆 絹本著色 年代不詳 当館蔵

 

 

新年を祝う座敷の床の間には、縁起が良い画題の掛け軸を掛け、蓬莱と呼ばれる飾りをおきます。掛軸の画題は日の出や鶴亀・松竹梅・七福神などがあります。蓬莱は蓬莱山に見立てた飾り物で、江戸時代後期の書物『守貞謾稿』によると、三方という白木の台の上に、裏白、ゆづり葉、野老、神馬藻を必ず置き、ほかにも松竹梅、橙、蜜柑、橘、榧、搗栗、串柿、昆布、伊勢海老等を積むとされています。

常設展示室内、薬屋座敷の正月飾り   掛軸は江阿弥の「松鶴図」

 

 

 

今回は江戸後期に大阪で活躍した絵師、森一鳳(1798-1871)による「七福集合図」をご紹介します。中央に蓬莱があり、若松・蜜柑・昆布などを載せています。その蓬莱を囲んで7人の女性が座っています。

 

女性たちの顔は丸顔で目や鼻・口は小さく、頬の高さが強調された、いわゆる「お多福」顔をしています。柔和に微笑みながら和やかに会話をする様子が明るく軽やかな調子で描かれています。着物には巴紋や片輪車、宝珠、鹿の子、桜などの華やかな文様があしらわれています。

 

7人という数から「七福神」になぞらえているようですが、特定の福神を表す特徴は見受けられません。絵の上下に「福壽」の文字を織った金襴の裂が使われていることも、めでたさと豪華さを増しています。この掛け軸は大正期まで大阪市内の旧家が所蔵していたものです。

 

服部麻衣(大阪くらしの今昔館学芸員)