
美と健康×未来の住まい タカラ・ビューティリオン

桝井 貞次さん(右)、久保 直美 さん(左)
大阪市中央区に本社を構えるタカラベルモント株式会社。
1921(大正10)年に鋳物工場としてスタートし、理美容機器や医療機器の製造・販売などを行う。70年大阪万博では単独でパビリオンを出展した。「美しく生きる喜び」をテーマに掲げたパビリオン「タカラ・ビューティリオン」について、広報室の桝井さんと久保さんにお話を聞いた。

前衛的な建築理論を取り入れたパビリオン
創業100年を機にリニューアルしたという本社1階には「タカラ・ビューティリオン」の模型(表紙参照)や、70年大阪万博に関する資料が展示されている。

中央下の写真は会期中に開催された「100人の花嫁」パレードの様子。
建物の設計を担当したのは建築家の黒川紀章。人間が新陳代謝をするように、有機的に変化する建築のあり方を指す、「メタボリズム」と呼ばれる建築理論を同パビリオンの設計にも取り入れた。

地上1階から4階までは、鋼管ユニットを組み合わせたジャングルジムのような骨組みに、四角いステンレスカプセルを配した建物だった。工場で製作されたパーツを会場に持ち込み、たった7日間で建物が完成し、建設期間の短さでも注目を集めたという。
世界各国のパビリオンなどに比べると規模は小さかったが、183日間の会期中におよそ350万人が訪れた。

本模型はプレゼンテーション用に製作されたもので、実際とは少し異なる。
美と健康は普遍的な願い
タカラ・ビューティリオンのテーマは「美しく生きる喜び」。当時発行された万国博手帳(編集・発行 ダイゴー株式会社(1969))には「人間の美に対するあこがれ、美への探究心は、国境、思想、世代を越えて、はかり知れないものがあります。その根源をさぐり、明日への夢を描くのがタカラパビリオンです」とある。
桝井さんは「美しくありたい、健康でありたいというのは人類共通の願いです。理美容や医療の現場で働く方々のサポートを通して、間接的に多くの人の美と健康を支えたいという思いが長年受け継がれています」と語った。

左からキッチン、応接室、仏間。(写真提供:タカラベルモント株式会社)
具現化された未来の住まい
展示空間は地下1階から地上4階まであった。地下には映像や音楽が流れる劇場空間、地上1階は「楽しい生活フロア」、2階は「未来のおしゃれフロア」、3階は「ショーフロア」、4階には「未来の住まい」が展示された。
4階に展示されたのは、カプセルごとに作られたキッチンや応接室。住まい方や家族構成の変化によって、組み合わせを替えられる仕組みを取り入れた住まいのあり方が提示された。
興味深いのは仏間もカプセル状の部屋につくられたことだ。「創業者は信心深い人だったので、仏間がつくられたのだと思います。空間を有効活用するために、仏壇は壁に埋め込まれていました」と久保さんはいう。

(写真提供:タカラベルモント株式会社)
キッチンカプセルにはいくつかの新しい機能が組み込まれていた。モニターや電話、電子レンジなどだ。モニターにはレシピを映し出すことが想定されていたようだ。
「当時の創業者との対談(タカラ・ビューティリオンパンフレット(乃村工藝社蔵)に掲載)で、黒川紀章は人間の排泄物や台所のゴミ処理など、環境衛生について課題があると語っています。そういった意識からか、調理台の下にはゴミ処理機も備え付けられていました」と桝井さんが解説してくれた。

左手前の上部にあるのがモニターと電話機。
(写真提供:タカラベルモント株式会社)
宇宙時代の住まいを見据えて
タカラ・ビューティリオンではカプセル型のヘアサロンやデンタルクリニックも展示された。「創業者には、わたしたちが携わる理美容業界の素晴らしさを伝えたいという強い思いがありました。壁全体にバラが散りばめられた華やかなヘアサロンなどを提案したのもその思いからではないでしょうか。また、3階のステージでは、ほぼ毎日ヘアショーを開催していました」と桝井さん。

天井には 自動で動く器械が 設置されていた。
(写真提供:タカラベルモント株式会社)
タカラベルモント株式会社は2025年の万博にもブースを出展する。未来の美と健康を叶える住まいについて聞くと「宇宙で暮らすことが当たり前になっているとしたら、水が大きな課題となるでしょう。少量の水で暮らす、水を再利用する機能が発達するのではないでしょうか」と桝井さんは答えてくれた。
