
誌面セミナー 住まいの維持管理 空き家の管理・利活用
全国的に増加傾向にある空き家。空き家を所有した場合、周辺の生活環境に影響を及ぼさないよう、適切に管理する必要があります。管理やその後の利活用について考えておきましょう。
教えてくれたのは

金森 匡邦(かなもりただくに)さん
空き家のリスク
空き家となった住まいは、維持管理を行わずに放置すると建物の劣化が進みます。カビやシロアリの発生、漏電・漏水、雨漏り、外壁の劣化などにより建物価値が低下します。また、植栽が敷地の外にはみ出したり、ゴミが投棄されたりすると、近隣の景観悪化や環境悪化を招いてしまいます。その結果、実害が発生すると所有者は過失の有無にかかわらず、発生した損害に対する責任を負います。
また、平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、命令違反による罰金や特定空家への指定という制度も設けられています。「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税の優遇が無くなります。所有する空き家はきちんと管理することが大切です。

空家を管理・利活用しよう
空き家を所有した場合は、定期的な見回りと点検、通風、修繕を行うなど建物の維持管理をすることが重要です。継続的に行うことで、変化に気づきやすくなり、早めに対処することができます。国土交通省が公開している「空き家管理チェックリスト」に、必要な対策がわかりやすくまとめられています。参考にしながら継続的な維持管理を行いましょう。
空き家を所有したけれど売却したい、居住はしないが活用したい場合は、維持管理を続けながら売却や活用の方法を検討しましょう。所有者が複数いる場合には共有を解消しておいた方が良いでしょう。家という財産を共有していると、争いが起きる可能性が高くなります。家財等の残置物を減らす、片付けておくことも欠かせません。相続する、売却する、解体する場合にはそれぞれに税金もかかります。控除特例や軽減措置がないか調べ、公的な補助金の活用も検討してください。
空き家の活用には、再建築、定期借家、用途変更などさまざまな方法があります。さらにリノベーションや改修にもいろいろな方法があり、費用も大きく異なります。建築基準法や税制度など専門知識も必要です。


維持管理をせず放置された空き家の事例。建物が劣化すると自然災害による被害を受けやすくなり、周囲に被害を与えることもある。
(写真提供:一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会)
早めの相談、早めの対策
管理、利活用のポイントは、「自分で判断しない」「不必要な情報に振り回されない」「わからないことをそのまま相談する」。早めに相談し、建物の維持管理をしっかりと続けておくことで、焦らず判断するための時間が確保できます。
大阪市では相談窓口の設置のほか、空き家所有者への啓発や支援、地域や専門家等との連携などを行なっています。コンサルティング協会や専門家団体による空き家相談もありますので、ぜひ活用してください。相談の際には、空き家となった建物の写真や、契約書等の重要書類、納税通知書などを揃えておくとスムーズです。
(参考)
- 狭い道路に面した古い木造住宅の解体費補助
- 大阪市空家利活用改修費補助事業
- 大阪 空き家ホットライン
- 大阪市 空き家相談ホットライン 電話:06-7713-1375
- 大阪市 空家相談