古くて新しい長屋。「長屋人」に、会いに行こう。
大阪で長屋を修復し、活用した先駆者。 「木造長屋を次世代に残すために。」 長屋人 寺西 興一さん
大阪市阿倍野区にある寺西家長屋は、国の登録文化財に登録されている希少な物件。昭和7年に建てられた長屋は、15年前に改修工事を行ってから、飲食店が4軒並び、昼夜を問わず、地元の人たちに愛される場所となっている。現在に至った経緯を長屋の大家である寺西興一さんに伺った。
「この長屋を建て替え、賃貸マンションにしようと考えていたとき、当時、京都大学の西澤英和先生が長屋を見に来られ、とても良い長屋なので、ぜひ登録文化財として残して欲しい」と強く勧められたんです。それがきっかけで、大阪府の文化財保護課に相談してみたところ、「長屋として全国初の登録文化財になる」という話をいただき、それならばと、保存する方向で考えだしたんです」と語る。
長屋を生かすためには、外観も大切なので、建設当初の姿に戻す改修工事を行うことにした。厨房など不便な部分はあるといわれるが、何よりも、この長屋という空間を愛して使ってくれていると寺西さんは感じている。
長屋の間取りにおいても、裏側にある便所から、玄関を通さなくても直接外部に繋がる“汲み取り道”という裏通りがあるのは、大阪ならではの文化。当時から暮らしのことをしっかり考えた長屋づくりがされていたことがわかる。「長屋は古い、汚い」というイメージがありましたが、改修後に賑わう長屋を見てから、自分の中のイメージが大きく変わりました。実際に大家としても、賃貸マンションにするより高収益だったという実績も出ています。今あるものを活かして、次の時代に活用しようとする若い人が増えていけば嬉しいですね」。