まちの人の顔が見える、職住一体の暮らし。 「この暮らしがどんどん好きになっています」 長屋人 伴 現太さん
仕事場と住まいが一緒になった暮らしのことを職住一体というが、そこに“まちでの暮らし”が加わっているのが、長屋暮らしの特徴ではないだろうか。その暮らしを体現している
長屋が、大阪市阿倍野区の桃ヶ池にある。4軒長屋の一角に一級建築士事務所「連・建築舎」を構えている伴現太さんは、この場所で夫婦・子ども3人+猫と暮らしている。「移り住んだのは、約8年前。元々は谷町六丁目で事務所を構えていましたが、この住まい方を選択したのは、子育てが大きなきっかけ。飲食店経営をしている奥さんと、フォローし合いながら生活ができたらいいなと考えました」と伴さん。
間取りは、1階がリビングと飲食店(現在は休業中)、2階が設計事務所、中庭の奥にある離れが家族の住まいだ。飲食店スペースが仕事の打ち合わせや、家族で使う広いリビングにと、時間帯や用途によって使い方が変わる。住まいの明確な区切りが本人たちになく、プライベートオンオフが分かれていないことが心地良いのだそう。
伴さんは、近隣の長屋住民と一緒に2013年から始めた「むすびの市」というマルシェイベントも開催している。うつわ屋や飲食店など、知り合い同士での出店数は15- 20店舗ほど。目的は地域交流として、年二回程度、長屋一帯が賑わう。
「この場所で仕事をするだけではなく、生活者としてまちに溶け込んでいることが重要です。さらに子どもがいると地域との関わりがより深くなる気がします。店に来た近所の方の小さな相談にのっていると知らないうちに仕事も広がって、以前と仕事のやり方も変わりましたね。仕事や子どもや奥さん、それぞれがまちで暮らす中での関係が折り重なって、1+1+1が3ではなく、倍々に増えてどんどん豊かになっている気がします」。