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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

見守りシェアハウス 弁天堂 (阿倍野区)高齢者も見守る人も幸せにしたい

 大阪市阿倍野区にある「見守りシェアハウス弁天堂」は、寝たきりも含め要介護度を問わず、高齢者が生活できる賃貸住宅だ。高齢の住人に対しては、介護保険サービスを利用したケアプランに基づき、医療機関と連携して、医師の定期的な往診や24時間体制の介護も行われている。住人との距離も近く、代表の宮川納美さん自らが介護士として、夜勤で見守りの対応をすることもある。

 オープン当初から住んでいる森田紀代さん(80歳)もここに住み始めてから体調がよくなったそうだ。「スタッフさんや代表の宮川さんの顔が見えて、なんでも言える関係性があって安心。今は住んでいるみんなと仲良く笑っていられるので、不安がない。もう一人では暮らせない」と森田さんは笑う。

 宮川さんは、元々デイサービスの運営に携わっていた。そんな中、限られた時間で介護サービスを提供することに限界を感じ、住まいを提供することで、その人の生活全般に関わりたいと考えたそう。「賃貸住宅よりも安心で、老人福祉施設よりも制限が少なく自由という住まい方をめざしてシェアハウスの形態を取り入れた」と宮川さん。

 もちろん、運営する上で課題はある。現行の介護保険による居宅サービスでは、一人の介護者が同時に複数の人にサービスを提供することができない。例えば5人の入居者が同時に食卓を囲んだ場合、介護者が5人必要になる。高齢者向けシェアハウスという新たな住まい方が出てきている中で、より柔軟に制度を使うことができれば、高齢期の暮らしの可能性はもっと広がると宮川さんは考えている。

 「一番は、高齢者が豊かに過ごせる状況であること。見守る側の介護者が幸せであれば、そのサービスを受ける利用者さんも幸せを感じられるはず。介護はプロの職人。なのに、社会的地位や給料もまだまだ低い。介護者が幸せな状態というのは、ひいては高齢者の方が幸せな状態のことだと思う。その仕組みづくりに取り組んでいる」。宮川さんの挑戦は続いている。

 

リビングにある洗面台は、車椅子利用の方でも使えるよう設えられている。