シェアハウスで暮らす
82号トピックス
弁護士 中 村 昭 喜
解説①
賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化
改正民法では、賃貸借終了時の賃借人の義務につき、①賃借物の通常損耗や経年劣化については原状回復義務を負わない、②賃借物に備え付けたものは、分離できないもの、分離
に過分の費用を要するものを除いて収去(※)する義務を負う、と明文化されました(六二一条、六二二条)。※取り外して撤去すること
- この改正は、従来の判例の見解を明文化したもので、従前の実務の取扱いを大きく変更するものではありませんが、事後の争いを避けるためにも、契約時点で、それらの範囲、費用負担の区分を明確にし、回復すべき「原状」を写真や図面等で明確にしておくことが望ましいといえます。
- 原状回復義務については、当事者の合意によって通常損耗や経年劣化も含めて原状回復を行うと契約に定めること自体はなお有効とされますが、個別の状況を踏まえて明確な合意があるといえない場合、暴利行為と評価されるような場合等は、消費者契約法により、賃借人(消費者)に一方的に不利な特約として無効とされます。
解説②
敷金に関するルールの明確化
- 旧法では敷金に関する規定はありませんでしたが、改正民法では、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義され、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に返還するという内容が明文化されました(六二二条の二)。
- これまでの実務では、敷金、保証金、権利金など様々な名目で金銭授受がなされていましたが、「いかなる名目によるかを問わず」とされましたので、右記の定義に当たれば「敷金」として取り扱われることになります。
- この改正は、従来の判例の見解を明文化したもので、従前の実務の取扱いを大きく変更するものではありませんが、明文化されたことで、消費者契約法により、相当な金額を超える敷引特約などの消費者である賃借人に一方的に不利な特約は無効とされる可能性があると考えられます。