時代の変遷と共に受け継がれる町家
江戸時代に「天下の台所」と称され、蔵屋敷が立ち並び、米や物資が集まる金融と経済の中心だった大坂。大阪くらしの今昔館には1830年(天保初年)頃の町並みが実物大で再現されている。
大阪の町を歩けば、そこここで歴史の痕跡にゆきあたる。最初は、くすりの町として栄える道修町。「田辺三菱製薬史料館」は14階建ての新しいビルの2階にある。入るとすぐ、明治前期の田邊屋の店構えが、実物大で再現されている。店の間では、明治の中興の祖、12代田邊五兵衞のアニメが上映されている。この町家は今昔館の学芸員が監修・設計をしたもので、格子や敷居などの細部まで忠実に造っている。
道修町と堺筋との交差点に建つのが小西家住宅。同家は1903年に完成した表屋造りで3階座敷をもつ、豪壮な近代町家であったが、1911年の堺筋の拡幅によって間口4 間分が削られ、さらに1923年の関東大震災後に3階座敷が撤去された。その後、戦災を免れ、2001年に重要文化財に指定された。現在は予約すると建物の内部が見学できる。
店の間を改装した「旧小西家住宅史料館」には、3階建て当時の模型がある。「今昔館に1932年の北船場を再現した模型があって、小西家の外観が分かるのでこの間の変化が比較できます」(谷)。
船場の「旧宗田家住居」は、1925年に建築された近代町家。昔の図面や写真を元に修復され、2018年、美しいガラス容器を扱うギャラリー「CuteGlass Shop and Gallery」に甦った。ここには伝統の良さと新しいデザインを融合させた鋭い感性がよみとれる。「多くの町家が取り壊されている中で、伝統意匠を残しながら現代の機能を組み入れた再生町家です」(谷)。
【企画展のお知らせ】
おいしい記憶 期間:2020年12月7日(月)〜