館長と歩く、魅力的なミュージアム
文化の殿堂としての寺院
大阪の歴史を1400年さかのぼると、日本最初の官寺・四天王寺にたどり着く。聖徳太子が教育、社会福祉、医療、薬学の4つの事業を揃えて創建した日本初の国立文化施設といえる。ここは大阪人の心と生活を支えてきた唯一無二の寺院である。何度も天災や火災に遭うが、その都度大阪の人々の支援で復興されてきた。大坂の陣後に四天王寺の復興に活躍した大工棟梁が、中井大和守正侶である。「重要文化財の中井家資料は、今昔館に寄託されています。今昔館の企画展「大坂の陣と大坂城・四天王寺・住吉大社の建築」では「四天王寺宝物館」から、江戸時代の伽藍を描いた絵画を借用して展示しました」(谷)。
企画展のお知らせ
【四天王寺宝物館】元三大師堂〜鬼となった高僧 良源祀る御堂の歴史〜
期間:2021年1月1日(金)〜2月7日(日)
大阪の東南に位置する平野の全興寺は、地獄から極楽への体験ができる寺院である。境内にある「地獄堂」では地獄を描いた映像を流し、子どもたちに生死の倫理観を伝えている。「ほとけのくに」は仏像に囲まれた神秘的な地下室で、中央にあるステンドグラスの曼荼羅の上で瞑想にふけり、極楽を体感するという仕掛けである。同寺の片隅に〝井戸の音〞や〝朝刊を配る音〞など、平野の町の生活音を100のサウンドスケープとして納めた「平野の音博物館」がある。これは音を通して町の風景が呼び起こされるユニークな展示である。「難しい教義だけでなく、体験を通して楽しみながら学ばせる工夫があちこちに見られ、博物館の展示手法としても学ぶところが多いです」(谷)。