日々の暮らしを見つめなおす
当たり前の日常の中にこそ、歴史を読み解くヒントがある。暮らしに関わる〝モノ〞を通して、今につながる文化を再認識してもらうことも今昔館の使命である。今昔館の企画展「おまけ大行進」は、江崎グリコのおもちゃをはじめ、大阪に関連あるメーカーやコレクターによる玩具やフィギュアを一堂に集めた展覧会であった。「江崎記念館」では、江崎グリコの創業者・江崎利一氏の哲学を紹介しながら、商品の歴史を総覧できる。利一氏は「子どもの天職は、食べることと遊ぶことである」と考え、食べ物とおもちゃをセットにした健康菓子グリコを開発した。そこには知育の精神があり、その先見性には驚かされる。「彼は佐賀県人だが、大阪の風土の中でその才能が開花した人です。大阪でなければ生まれなかった文化がたくさんあるが、グリコもその一つです」(谷)。
【企画展のお知らせ】
Glico のグッズ展 ~販売促進キャンペーンからみたGli coの『創意工夫』~
期間:2020年11月2日(月)~ 2021年3月30日(火)※1970年代以降を紹介
昭和の時代、子どもたちがワクワクしながら通った町の駄菓子屋さん。先に紹介した平野・全興寺の境内にある「小さな駄菓子屋さん博物館」には、昭和20〜30年代のメンコやビー玉などが並び、なんとも懐かしい気持ちになる。小学校の教室や家の内部を再現したミニチュア模型もある。平野の住人が、幼い頃を回想して制作したもので、細部まで精密に作られており、作者の想いがこもっている。
全興寺の門前にある「新聞屋さん博物館」は、大阪市内でもっとも古い朝日新聞販売店「小林新聞舗」が運営する博物館である。地域向けの号外や商店街の店をマスにしたすごろくなど、地域ならではの情報を自主発行していた記録が展示されている。「大阪人は、暮らしを豊かにすることに、骨身を惜しまない。暮らしに根付いた情報発信を続けてきた新聞屋さんだからこそ、できた博物館ですね」(谷)。
家族の団らんの風景も、時代によって少しずつ変化してくる。今昔館のシリーズ企画展「昔のくらし」は、茶の間やキッチンの道具から、暮らしの文化をひも解くように心がけている。
昔と今だけでなく、暮らしの未来を展望できるのは、大阪ガスの「ハグ(hu+g)ミュージアム」。現代の暮らしに根付くガスに関する展示に加えて、エコシステムやIoT(モノのインターネット)などの先進的な技術を取り入れた、災害などに備えた少し未来の暮らしが提示されている。これからの住まいや暮らしへの想像力が刺激される。「暮らしの断片をパズルのように、一つ一つ組み合わせることで立体的な理解となり、過去から現在への流れが体系的に分かるようになります」(谷)。