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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

はたけもり🌱HATA.Lab×COME.Lab(生野区)

歴史をつないで、「懐かしい未来」をつくりたい

 

「子どもの頃に憧れていた屋根裏部屋が、天井裏に隠れていたんです。改修しなければわかりませんでした」と嬉しそうに話す、一般社団法人いくのもりの渡邊芳枝さん。

 

両親が営んでいた米穀店兼住居の空家を改修し、2021年4月に畑と建物が一体化した『はたけもり HATA・Lab×COME・Lab』をオープンした。

 

入り口から一歩入ると、古く大きな梁が見下ろす土間と小上がりのキッチンがある、吹き抜けの空間が迎えてくれる。

天井に伸びるはしごを登れば、屋根裏部屋にたどり着ける。

 

大阪市の空家利活用改修補助事業を利用することで、古い空家が懐かしさと新しさの融合するオープンスペースへと生まれ変わった。

 

屋根裏部屋から顔を覗かせると、土間にいる人と会話ができる。

 

たまねぎ、大根、ピーマンなど、裏の畑は季節の野菜や果実でいつも賑わう。
びわやいちじくの木も。近隣の住人が畑の管理を手伝ってくれる。

渡邊さんは長年、大阪市内を転々とする市民活動「ラウンドおおさか」を運営してきたが、これからは、生まれ育ったまち生野に軸足を置き、『はたけもり』を拠点に、生野の〝懐かしい未来〞をつくる活動を行なう。

 

父が米穀店を営んでいた当時からつながりのある近所の人は、〝芳枝ちゃん、ここに何ができるんや?〞と、改修中に何度も立ち寄り、その度にまちの昔話を聞かせてくれた。

 

生野は家内工業が盛んなものづくりのまちで、渡邊さんも子どもの頃に内職をしていたことを思い出したそうだ。「キッチンの吊り棚を製作した製作所さんは、生野で祖父の代からの事業を引き継がれており、改修工事を行った工務店さんも生野の事業者さんです。 

設計を手掛けた生野区在住の伊藤千春さん(イトウチハル建築設計工房)も、生野を紹介する地域情報サイト『桃谷ロイター』を運営するなど地域との交流が深い方です。

改修を通して家の歴史やまちのことが改めて分かったり、生野のまちと人が交流するきっかけになっていることも、この取り組みの特徴かもしれません」

 

「. HATA.Lab×COME.Lab」のイメージイラスト。手掛けたのは味方慎一さん。
渡邊さんが長く活動していた「ラウンドおおさか」のパートナーとして、多くの人の縁を繋げてくれたそうだ。

 

『. はたけもり』の入り口前で。
(左)伊藤千春さん(イトウチハル建築設計工房)と、
(右)渡邊芳枝さん(一般社団法人いくのもり)。 

 

祖父の代から引き継ぐ畑もここにはある。

野菜を自分でつくると、食べ物のありがたさもわかるもの。

 

畑に触れる機会を通して、昔ながらの手仕事や手作りの良さを伝えていけたらと渡邊さんは考えている。

 

これまでには味噌作りやジャガイモの植付けをイベント化した「ジャガイモ一株オーナー募集」などを行い、今では近所の小学生が畑に遊びに来ることもあるそうだ。

 

 

「『はたけもり』は、古き良き懐かしいものを大切にする場でもあり、新しいチャレンジが生まれる実験の場でもありたいと思っています。

 

今後はこの場でICT(情報通信技術)活用のサポートを行う計画もあります。

まちと人をつないでいく場に育てていきたいです」。渡邊さんと『はたけもり』の挑戦は始まったばかりだ。

屋根裏部屋はまるで秘密基地のよう。
隣の幼稚園の桜を借景にした、遊び心たっぷりの小窓。
当時のままの1階奥の畳の部屋。かつての暮らしを思い起こさせてくれる。
渡邊さんこだわりのオープンキッチン。
裏の畑で収穫した新鮮な食材を、
長靴のままキッチンに持ち込める。

ハブチャリのステーションにも
「ラウンドおおさか」味方慎一さんのイラスト。
昔商売をされていた時のお重がでてきた

空家利活用改修補助事業について

今回、安心・安全に過ごすための耐震改修や、広々とした吹き抜け空間やオープンキッチンの整備、外観の改修などにより、空家が、新たに地域コミュニティの場「はたけもり」として生まれ変わりました。

 

これらの改修工事の実施にあたっては、大阪市の補助制度を活用しています。

非営利団体が、地域に開かれた場(こども食堂や高齢者サロンなど)として空家を活用する場合、改修工事費用等に対して補助を受けることができます。

詳しくは大阪市「空家利活用改修補助事業」をご覧ください。