
まちライブラリー(中央区、他)
大阪の風土で築かれる、まちの私設図書館

本を開くと、寄贈者や読者が書き添えたメッセージが目に飛び込んでくる。読んだ後はメッセージを残して本棚に戻す。本を媒介にしたこの循環が、訪れた人との接点になっている。
私設図書館「まちライブラリー」は誰でも場所を立ち上げて寄贈本を集められ、誰でも自由に本を借りられる場所だ。発起人によって運営方法もさまざまで、個性溢れる空間も魅力のひとつ。本にまつわるイベントが開催され、地域の人が集まる場所になっている拠点もある。

これを見て3階の「ISまちライブラリー」まで上がってくる人も多い。
まちライブラリーは、2008年に天満橋のビルの一室から始まった。全国に拠点が広がるなか、全858拠点(2021年5月31日現在)のうち大阪府内に229拠点(市内に108拠点)と大阪が大半を占める。これは大阪人とまちライブラリーの性質がうまくマッチングしているからだと、提唱者の礒井純充さんは話す。

近くのオフィスで働く人たちのくつろぎの場や、子ども同士の待ち合わせ場所として地域に重宝されている
「大阪人には考えるよりまずはじめてみよう!という行動力と、自分にとっておもろいかどうかを優先する気質、そして世話焼きのおせっかいが多いという風土があります。
まちライブラリーのような自由度の高い場所では、これらの積極性がかなり活きます。
こんな本を集めたい!こんな場所をつくりたい!といった内発的な欲求が、いい運営を続ける秘訣だと多くの事例を見て感じます。


自分のための行動が、結果として人の役に立つという現象ですね」人が集まるまちライブラリーには、利用者に豊かな人間関係が生まれていると礒井さんは続ける。
「家族、学校や職場など必要不可欠な〝縦の関係性〞ではなく、偶発的な〝斜めの関係性〞が生まれているから。
例えば、たまたま居酒屋で隣に居合わせた人と仲良くなるなどの関係性と同じです。まちライブラリーのスタッフや同じイベントの参加者との会話や本のメッセージ欄での交流など、人との接点が増えることで場所とそのまち自体が身近になり、自ずとコミュニティが醸成するのだと思います」。
大阪ならではの風土が育むコミュニティ。ふらっと気軽に、近所のまちライブラリーに足を運んでみたい。

読んだ人が感想を書き連ね、感想がいっぱいになると継ぎ足していく。
このカードから交流の輪が広がる。


