だんじり継承で育まれる地域の縁
鶴見区だんじり保存会連絡協議会 (鶴見区)
軽快なだんじり囃子を奏でながら、だんじりを引き、ゆっくりとまちを練り歩く。
大阪市鶴見区で行われている、五穀豊穣を神に感謝する秋の伝統行事「鶴見区だんじり祭」だ。
他のだんじり祭りと一風異なるのは、鶴見区内の5つの地区が集まり、同じ日にパレードを行うところ。
平成9年に発足した『鶴見区だんじり保存会連絡協議会』は、今津地区・横堤地区・中茶屋地区・浜地区・諸口地区が現在参加している。
地区それぞれにお囃子や地車の趣向が異なることも、「鶴見区だんじり祭」の面白さのひとつだ。古くから続くまちの伝統行事についての想いを、今年の協議会会長で、中茶屋地区会長の東堤さんに伺った。
中茶屋地区ではだんじり囃子と共に、秋が訪れる。
祭りが近づくと、だんじり小屋の前で行われるお囃子の練習は、若手中心に行われる。
伝統を引き継ぐための大切な行事だ。
地域の小学校にプリントを配布してお囃子への参加を促したり、地域活動協議会の催しでお囃子体験を実施するなど、新しく地域に来た人や若い世代へ伝統行事を継承するための活動も積極的に行っている。
「祖父の代からこの地域に住み、だんじり祭りを見て育ってきました。
私にとっては、息子の世代に引き継いでいきたい大切な地域の文化です。
だんじり祭りの良さは、年に一度、地域の人と世代を超えて交流できること。
息子との会話も弾みますし、祭りの準備のためにメンバーで集まると、地域の困りごとも自然と話題に上がるので共有できます。
こういう機会が、いざという時の地域の連携にもつながると思うのです」と東堤さんは話す。
中茶屋地区事務局の山本さんは20代の頃、この地に引越してきた。
当時、地域との繋がりが薄かったが、祭りに関わることで地域と密接につながったと話す。
居住地外で働いていると、地域の知り合いはなかなか作りにくいもの。
一度中茶屋を離れ、Uターンでこの地に戻ってきた綿世さんも、祭りを通して仕事以外での人間関係を築けたことが嬉しいと語る。
祭りの時期になると、同窓会のように顔を出しに戻ってくる懐かしい顔がある。
盃を交わし、語り合う。五穀豊穣を祝うという意味が薄れても、祭りは今でも、地域での縁のつなぎ目としての役割を担っている。
コロナ禍により昨年、一度は途絶えた祭りの縁。今年こそはと東堤さんたちは意気込む。
「今、祭りの捉え方も様々ですが、祭りをきっかけに、地域と関われることは重要なこと。若い世代にしっかりと届けていきたい。まずは、祭りを楽しみに来てほしいです」。
地域の伝統行事が育んできた人の繋がり。
祭りを楽しみながら、地域のこれからへと想いを馳せたい。
第三回鶴見区だんじり祭 中止
令和3年10月10日(日)に開催を予定していましたが、残念ながら中止になりました。