今昔館の天井改修工事と その期間中の展示
大阪くらしの今昔館の天井とその改修工事
今昔館10階の展望フロアからは、瓦屋根が連なる近世・大坂の町並みを間近に見ることができます。
町並みの中心である町会所の火の見櫓の高さを確保し、柱のない大空間をつくっているのが、筒型(ヴォールト型と言います)の天井です。
まる一日・24時間の空の変化の演出も、遮光幕で天空光を調節しながら、この天井に投影されているのです。
その優れものの天井ですが、この10月から約1年間の改修工事に入ります。
様々な震災の経験から平成25年に建築基準法施行令が改正され、天井に関わる基準が変わりました。
利用者の安全のために、今昔館もこの秋から、工事を行うことになりました。
その期間、9、10階には入れなくなります。
今昔館の天井改修の場合は、他の施設と大きく異なる課題があります。
改修工事にあたって、綿密な考証と伝統工法によって再現された近世・大坂の町並みを保護していかなければなりません。
工事のための足場の組み方に工夫がいるのはもちろんです。
さらに、木部・漆喰壁・瓦屋根に工事で発生する粉塵が付着すると、その除去がきわめて困難ですし、落下物による瓦屋根の損傷リスクにも備えなければなりません。
また、町家室内の家具・調度の他、室外の精巧な植栽や雨落ちなどにも対策が必要です。
今回は、粉塵の侵入を防ぐとともに、落下物を防ぐ養生を行い、町並みの保護に万全を期しています。
皆さんに親しまれた9階の町並みを約1年間にわたり閉じることは残念ですが、安全・安心のために避けられない改修工事であることをご理解いただければと思います。
改修期間中の展示
天井改修期間中、公開部分は8階のみとなり、近代大阪の展示室(第二展示室)*1と企画展示室、それにエスカレーター脇のロトンダを使った展示となります。
(*1 これまでの展示と変更はありません。)
まず、ロトンダでは映像を楽しんでいただくコーナーを設け、「まちなみシアター」と名づけました。
桂米團治さんの案内で、近世・大坂から近代・大阪への町並みの変化をショートストーリーにまとめた動画を準備しています。
閉鎖中で見られない9階の町並みを映像で楽しんでいただけるでしょう。
企画展示室では、茶室と町家座敷の実物大模型を設置します。
茶室模型は、公益財団法人竹中大工道具館が所蔵する、茶室「蓑庵」*2の構造模型です。
町家座敷は、9階の展示室・大店の座敷を再現したもので、建具は9階の展示に使ってきたものを建て込みました(2つの模型は、大工棟梁・阿保昭剛氏が組立てました)。
(*2 実物は重要文化財で大徳寺玉林院にあります。)
むこう1年間*3、企画展は、茶室・座敷と関連付けながら、そのまわりのスペースを使って行うことになり、その第1段が裏表紙で紹介している「商都慕情Ⅱ」です。
(*3 茶室模型の展示は令和4年2月末迄。)
工事にかかる1年、今昔館の展示スペースはぐっとコンパクトになりますが、そのなかで魅力的な展示・企画を組んで、ご来館をお待ちしています。
大阪くらしの今昔館については、こちらからご覧ください。