まちを再発見させてくれる 地域アートイベント「みてアート」西淀川区
東へ西へ、北へ南へ。パンフレット片手に子どもたちがまちなかを駆け巡る。
大阪市西淀川区の地域アートイベント「みてアート2021~にしよどがアートになる日~」が、2021年11月6,7日に開催され、JR御幣島駅を中心に西淀川区内の地域のショップ、区役所や大野川緑陰道路などでアート展示やワークショップ、音楽演奏などが行われた。
現代アートを体感しながら地域のみんなが楽しめるアートイベントで構成されている。 恒例行事であるシールラリーを、毎回楽しみにしている子どもも多い。9年目となる今年はコロナ禍の中、対策をとりながらの開催となった。
みてアートは2013年に 「御幣島芸術祭」 として生まれた。その背景には、かつて西淀川区が抱えていた公害問題がある。
1960年頃、この地域には工場がたち並び、多数の公害患者が発生したことを受け、1978年に西淀川大気汚染公害裁判が行われ 1995年に被告企業9社と和解した。 その和解金の一部を 基金にして、1996年に設立されたのが、 みてアート実行委員会の事務局である公益財団法人公害地域再生センター(愛称あおぞら財団)だ。
それ以降、「手渡したいのは青い空」 の想いを元に、 地域再生 ・ 活性化に向けた活動を行っている。「西淀川区のまちの魅力を体感してもらう機会にしたい」 と、みてアートの立ち上げから関わる、あおぞら財団の事務局長藤江徹(ふじえ いたる)さんは話す。
みてアートでは、 地域活動を行う団体も積極的に参加する。
初回開催から出展しているNPO法人西淀川子どもセンターは、 拠点を開放し、 毎年趣向の異なるワークショップを開催。イラストや作品も展示され、 同センターの活動を知らせる機会にもなっている。
2018年からは、 バスターミナルの跡地を 「西淀川アートターミナル(N A T)」と名づけアート展示や交流スペースとして活用するという試みもスタート。
N A Tの総合ディレクターとして、アーティストの山田龍太(やまだ りゅうた)さんが加わったことで、若手の新進気鋭アーティストが参加する流れも生まれ、みてアートの現代アート分野が充実した。
参加するアーティストたちは、まちに滞在し、まちを歩くことで、独自の感覚で西淀川を体感し、そしてアート作品として昇華させる。その作品を通して、まちの人が自分の住むまちを再認識するきっかけになっている。
ボランティアチーム「N A T メイツ」は地域とアーティストのつなぎ目として、イベント運営に深く関わっている。
ボランティアリーダーのにしよどおやこ劇場運営委員長・岩本一美(いわもと かずみ)さんは「生まれ育った西淀川区を盛り上げたい」とほほえむ。
「西淀川区でまだ掘り起こされていない魅力を、さまざまな人の力を借りて発信してきたい」と藤江さん。
地域再生を目的に始まった、みてアートが、地域を巻き込みながらその裾野を広げている。