都市を物語る建物
竹と鶏 廣岡浅子ゆかりの美術品
NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」で注目をあびた大阪の豪商加島屋廣岡家。
特にヒロインのモデルとなった廣岡浅子は炭鉱や生命保険など多くの事業をてがけ、女性実業家のさきがけともいわれました。廣岡五兵衛家に伝来した美術品や生活道具類のコレクションの中から、廣岡浅子ゆかりの品を紹介します。
「竹鶏図」は三面の衝立です。つがいの鶏と雛が三羽、地面をついばんでいます。背後に描かれた竹が生き生きと伸びやかな印象を受ける作品です。この絵は浅子が描かせたもので、後に浅子の娘・亀子が現在の衝立に仕立て直したと子孫の方に伝わっています。
浅子は嘉永二年(一八四九)酉年の生まれで、また、「脩竹」と号した時期もあり、竹のモチーフを好んだといわれています。この絵は浅子を表す鶏と好みの竹で構成されたお気に入りの品だったと想像します。他にも竹をデザインした一輪挿しには、裏面に浅子が詠んだ和歌が彫られています。
廣岡家に伝来した品々の中には紋が配された盆や椀、そしてランプや銀製の洋食器など生活が近代化する変化を感じさせるもの、家族が蒐集したミニチュアのコレクションなど多彩な資料があります。近代の大阪の商家の生活文化を物語るたいへん貴重な文化財です。展覧会でぜひご覧ください。
服部 麻衣(大阪くらしの今昔館学芸員)
企画展 特別展「商都大坂の豪商・加島屋 あきない町家くらし」
2022年7月15日(金)〜2022年9月26日(月)