多様なコミュニティをつなぐ 防災人材を育てるプロジェクト 「MUSUBOU」
お話を伺ったのは
大阪公立大学都市科学・防災研究センター(UReC)
副所長 三田村宗樹(みたむらむねき)さん
大阪と災害
「大阪には府内を南北に貫く上町断層があり、地震が頻繁に発生するほか、これまでに数多くの台風被害も経験してきました。大阪は災害都市と言えるのではないでしょうか」と教えてくれたのは、大阪公立大学都市科学・防災研究センター(UReC)※1副所長の三田村宗樹さん。防災について学べる仕組みづくりに携わっている。
※1大阪公立大学都市科学・防災研究センター(UReC):大阪公立大学の開設に合わせて大阪市立大学の「都市研究プラザ」と「都市防災教育研究センター」が統合し2022年4月に開設。都市研究・都市課題に取り組む。
同センターでは、コミュニティ防災人材育成プログラムのプラットフォーム「MUSUBOU」※2を開発している。「コミュニティ防災人材」とは、防災意識が高く、防災の専門知識があることに加え、フラットな立場で多様なコミュニティをつなぐことができる人だという。
※2eラーニングを基本として、防災に関する知識を自分のペースで学べるほか、掲示板での質問や他の受講者との交流もできる。
「地縁組織だけでなく、世代・企業・趣味・障がい者・移住者などさまざまなコミュニティがあり、それぞれが独自に活動している。それらをつなぎ合わせることは、防災はもちろん地域でのそれぞれの課題解決にもつながるはず」と三田村さんは言う。
自立した活動ができる人材を育てる
「MUSUBOU」における学びは第1段階:知識編、第2段階:実践編、第3段階:インストラクター養成編の3段構成となっている。知識編はeラーニングで災害のメカニズム、対策などを学ぶ。親子・学生・マンションなど各コミュニティに対応したコンテンツも随時追加され、受講者が自由に学ぶことができる。
第2段階の実践編、第3段階のインストラクター養成編は、受講するグループの地域やコミュニティに即したプログラムを組んで開催される。災害リスク評価に必要な情報収集の方法、防災イベントの企画・立案、チームビルディング、SNSやICT(情報通信技術)の活用方法など、コミュニティの活動ですぐに役立つことを実践を交えながら学ぶ。
最終目標は自立した防災アクションができる人材になることだ。第3段階まで受講を終えたある受講生は、地域の子ども向けにスタンプラリーや防災クイズを活用した防災まち歩きを企画・実施した。「MUSUBOU」には受講生同士が交流できる場があり、そこで生まれたアイデアを取り入れたという。
三田村さんは「防災はネガティブなイメージを持たれてしまいがち。AR(拡張現実)やICTなどのデジタルツールを活用したり、ゲーム的な要素を取り入れたり、楽しみながら参加できる方法を考えることは重要。受講生同士の交流が活動の幅を広げ、継続につながれば嬉しい」と話す。
防災の視点を養う地震や台風は非日常だが、災害が起きた時に対応できるかどうかは日常のつながりが大きく影響する。
「防災の視点を養い、日常生活のあり方を見直すことでリスクを減らすこともできる」と三田村さんは言う。地震が起きたら、浸水したらどうなるかを具体的に想像しながらまちを見る。普段なにげなく歩いている場所にどのくらいリスクがあるのか、備蓄倉庫・トイレ・公衆電話など災害時に地域で活用できるものがどこにあるのかなどを知っておく。さらに、高齢者、子ども、障がい者など状態が異なる人がそれぞれに感じるリスクの違いを知っておくことなども重要だ。
「MUSUBOU」のeラーニングコンテンツは時間と場所を問わず無料で利用できる。第2、3段階のプログラム※3は大阪市内を中心に実施しているが、今後は大阪府下や他府県でも展開する予定だ。
※3第2、3段階のプログラムは1グループ10数名が集まれば開催できる。詳細は事務局へ問い合わせを。