住まいに隣接した里山が都市の住環境を豊かに彩る
グランドメゾン新梅田タワー THE CLUB RESIDENCE
JR福島駅からなにわ筋を淀川の方向へ歩いていくと、左側に小さな森が現れる。グランドメゾン新梅田タワーTHE CLUB RESIDENCE(以下、グランドメゾン新梅田タワーTCR)に設けられた公開空地だ。
地上51階、総戸数871戸の超高層分譲集合住宅が完成したのは2022年1月。くの字型の敷地のおよそ三分の一、3600平方メートルを超える部分が公開空地となっている。
企画に携わった吉田和也(よしだかずや)さんは、「大阪は都市の中の緑が少ないと言われます。大きな空地を作って、北ヤード(うめきた2期区域)に今後生まれる緑と、梅田スカイビルの緑、周辺の公園の緑をつなげたいと考えました。上空から見ると森がつながっていくようなイメージです」と語る。
周辺には高層集合住宅が多く、病院やコンサートホールなどがあるが、緑化された広い空地はほとんどない。敷地を占有地として閉ざすのではなく、公共の広場として開いた大規模な緑化空間は、エリア一帯の住環境の向上にも貢献している。グランドメゾン新梅田タワーTCRは地域の住環境に貢献する大規模な公開空地の計画などが評価され、良質な都市型集合住宅に贈られる、第35回大阪市ハウジングデザイン賞特別賞*(令和4年度)を受賞した。
「15時頃になると、小学生たちが走りまわっています。親子連れやベビーカーを押す方の姿もよく見かけます」と、管理会社の新子裕也(あたらしゆうや)さんは話す。広々として車が通らない、安心して走り回れる環境だからこその風景だ。居住者からは「ママ友同士で集まって遊べるのがいい」「散歩すると子どもが気持ちよさそうにしているので嬉しい」「都心部でこれだけ緑が多いところは他にないので住むことを選んだ」といった声が寄せられているという。
5月の初旬に訪れると、新緑がとても美しく、紫陽花のつぼみが膨らみつつあった。犬の散歩や、木陰で休む人など、誰もが気持ちよさそうに緑を眺めていた。歩いてみると、雑木林のような印象も受ける。「都心に昔ながらの里山を再生したい。阪神間の在来種を中心に植物を選定しており、水やりなども最小限にとどめて、自然の力を借りながら森を育てています」と企画に携わった小田真実(おだまなみ)さん。
在来植物を目指して、鳥や蝶が飛来する。夏にかけて雨が増え緑が濃くなる一方で、落葉する樹もあるため冬にはまた違った景色が見られるそうだ。利便性の高い都心部でありながら、自然を感じる暮らしができる。里山のような広大な公開空地が魅力的な住環境をつくっている。
*大阪市ハウジングデザイン賞とは
大阪市内で供給された魅力ある良質な都市型集合住宅を表彰し、その優れた面を明らかにすることにより、良質な都市型集合住宅の供給を促進するとともに、広く市民の方々や住宅供給に携わる人々の住宅に対する関心を高めていただくことを目的にしています。これまでに96件(うち大賞2件、特別賞15件)の住宅を表彰しており、前回(第35回)は126通の応募が寄せられ、そのうち52件の対象住宅の中からハウジングデザイン賞1件、ハウジングデザイン賞特別賞2件の表彰を行いました。