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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

きたつランド〈生野区〉 子どもたちが安心して居られる場に

運営:(一般社団法人KISA2(きさつ)隊)

 

「きたつランド」は地域の子どもたちの居場所となるよう活動を始めた。生野区にある大きな一軒家の1階は子どもたちの遊び場になる。運営するのはKISA2隊子ども応援部隊のメンバー。取材当日は射的やおもちゃすくいなど、手作りの夏祭りが開催されていた。

 

百日紅が咲き誇る木造2階建ての一軒家。近くに大きな公園がある。
室内に置かれたホワイトボード

 

KISA2隊は、コロナ禍に生まれた医師グループで、大阪市内全域を対象に訪問診療やクラスターが発生した施設の支援などを行ってきた。KISA2隊大阪隊長の小林正宜(こばやしまさのり)医師は生野生まれの生野育ちで、院長を務める葛西(かっさい)医院も生野区にある。活動拠点として地元の空家を活用できないかと探し、この物件と出会った。

 

医師の小林正宜さん。「子ども支援については素人だが、私たちができることを続けていきたい」 

「地域のキーパーソンに相談をして、この家に出会い、所有者さんにも直接お会いすることができました」と小林さん。所有者は地域のために使ってくれる人に貸したいと、一般的な賃貸に出さず、空き家バンクに登録して借主を探していたという。

 

2階はKISA2隊の拠点。使いやすさを考え畳を板張りに改修した。

 

2階建ての広々とした一軒家は、KISA2隊の拠点だけでは使いきれない。小林さんは「以前から子どものための活動をしたいと考えていたので、この場所で始めよう」と仲間に声をかけた。花岡真帆(はなおかまほ)さんは、呼びかけに手を挙げた一人だ。参加した理由について花岡さんは「子どもの虐待問題などに関心があり、仕事をしながら空いた時間を活動に使いたいと思った」と語った。

 

子ども応援部隊の花岡真帆さん。「学校では学べないことを学べる場にもしたいです」

この家と出会ってから、きたつランドの活動が始まるまでに、2年近くかかっている。小林さんは「すぐにKISA2隊の事務局として稼働しようとしていたが、子どもたちのためにも、しっかりと建物の安全性を確認しておくことにしました」とその理由を話す。

 

玄関を入ってすぐの大きな壁は耐力壁。土間はたくさんの人が出入りしやすいように広くした。

 

いざ調べてみると耐震性能が低く、大規模な改修が必要だということが判明。生野区の空き家カフェに相談をして、屋根瓦の軽量化や耐力壁の設置などを行った。工事費用の補填には大阪市の空家利活用改修補助を利用し、高い耐震性を備えた建物へと生まれ変わった。

大きな耐力壁に取り付けた黒板。思い思いに絵を描く。

 

明るい色に塗り替えた二階廊下。
昔の面影を残した階段周り。
 

花岡さんは「学校に通えない子どもたちが安心して居られる場にしたいです。医師や看護師など色々な立場の大人が関わっているので、子どもたちが家族以外の大人と出会える機会にもなると思います」と話す。今後について小林さんは「完成した家を見た所有者さんが、きれいになったと喜んでくれて、私たちも嬉しい。きたつランドもKISA2隊も、誰かを助けたいという気持ちのある仲間が集まっているので、これからも地域のために活動を続けたいですね」と語った。

 

改修前の1階和室。壁は塗り替えたが、欄間や建具はそのまま残している。 
1階は子どものためのスペース。この日は射的コーナーになっていた。
おもちゃすくいに熱中する子どもたち。 
かき氷を愉しむ姿も。