省エネな住まいづくり
講師 一般社団法人Forward to 1985 energy life発起人 野池政宏(のいけまさひろ)さん |
2022年6月に『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』が公布され、2025年度から新築住宅や増改築における省エネ基準の適合が義務化されます。住まいの省エネ化にはどのような方法があるのか。リフォームでも取り入れやすい省エネ化について紹介します。
省エネな住宅とは?
省エネ住宅とはエネルギー消費量が少ない家です。一方で、快適で健康的に過ごせる温熱環境をつくるためにはエネルギーが必要です。十分に冬は暖かく、夏は涼しく、かつ、エネルギー消費量を抑えられる住まいづくりについて考えます。
人は室温・表面温度・体に当たる風の強さ・湿度などから、温熱環境が快適か不快かを判断します。特に重要なのが室温と室内の壁や窓、床などの表面温度です。
室温は、低すぎても高すぎても健康を阻害する要因となります。冬のヒートショックや夏の熱中症などは命に関わります。冬は18度を下回らない程度、夏は27度程度の室温を保ちながら、部屋の上下や居室と非居室の温度差を減らすことが重要です。
また、表面温度に大きな差があると室温に影響がでます。冬に窓の表面温度が極端に低いと、部屋から熱を奪ってしまいます。
「熱」をコントロールする
住宅を新たに建てる場合、どのような省エネ化ができるのか。まずは「断熱・気密性能の確保」「日射遮蔽(にっしゃしゃへい)性能の確保」「日射熱(にっしゃねつ)取得」の3点に注目し、検討します。
断熱・気密性能の確保
断熱とは建物の内側と外側で熱の移動を少なくするための工夫です。冬は建物内の熱を外に逃がさず、夏は外からの日射熱が建物内に入ることを防ぎます。さらに、建物の隙間をなくして気密性を高めることで、より断熱性能が効果を上げます。
日射遮蔽性能の確保
夏に窓ガラスを透過したり、屋根や外壁にあたった日射熱を建物内に入れにくくする工夫です。簾や外付けブラインドなど、日除けを窓の外側に設置するのが最も効果的です。
日射熱取得
冬に窓から取り込む日差しは暖房エネルギーを大幅に削減します。南側は窓を多くして、日射取得型のガラスを使用しましょう。
長時間過ごす部屋を中心に
省エネ化には他にも日中の自然光を使って照明の使用時間を減らしたり、夏の夜が涼しい場合は風が通るように工夫したり、よりエネルギー消費が少ない家電を選ぶなどさまざまな方法があります。立地によっては太陽光パネルの設置も有効です。
熱がもっとも逃げやすいのは窓です。新築では断熱性能の高い窓を選ぶようにしましょう。そうすることで結露対策にもなります。またリフォーム時には、建物全体ではなく長時間過ごす部屋(エリア)を囲むように断熱することが合理的です(図)。また窓には内窓をつけることをお勧めします。コストパフォーマンスが高く、結露も発生しにくくなります。
住まいの省エネ化について比較検討する際には、インターネットの情報に惑わされないよう注意が必要です。法改正に伴い省エネ化に関する新たな補助金制度も出てきています。