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悦子さんたちの化粧直し「住まい劇場」の人形修復
8階近代フロアでは、「住まい劇場」が30分おきに上演されています。「空堀通」で理髪店を営んでいた一家が、戦災と戦後の混乱で住む場所を失い、仮住まいの「バス住宅」を経て、新しく「古市中団地」で暮らすようになるまでを、長女悦子(声・八千草薫さん)が語る「住み替え」物語です。1/5模型が昇降装置を使って町並み模型の上に降りてきて、それぞれの住まいの物語の舞台となり、その様子に驚く来館者もおられます。
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開館から20年を経て、この劇場も劣化が見られるようになりました。これまでも管理用の窓から定期的に清掃してきましたが、手が届かない箇所には汚れが蓄積していると予想されました。また、開館時の写真と比較すると、人形本体と着衣の退色が分かりました。照明の影響と経年の汚れの付着が原因と思われました。このため、今年4月に人形を取り外し、開館時の状態に戻すことを目標に修復を行うことになりました。劇場を台座ごとガラスケースから取り出し、ボルト止めされていた人形・26体を全部取り外しました。修復の工程は、着衣の脱衣・調査・数段階の洗濯・再縫製・再着装が基本になり、併行して人形の補修・補色を行います。
まず、状態確認と埃・汚れの除去の後、着衣を脱がせていきます。着衣のほとんどが縫い付けで着せられており、糸をほどいて脱がすことができました。スケールに合わせた模様の生地選びが適切であったことも改めて確認できました。
脱衣の工程では身に着けている小物の精巧さにも驚かされました。着衣の細部も丁寧で、帯や割烹着のひもの結び方、和服の襟の扱い、前身頃・後身頃の調整、頭の手ぬぐいの巻き方など、諸処に細かい工夫を見ることができました。
着衣は照明光による退色は予想よりも少なく、多くは埃の除去と洗濯で対応できました。洗濯では生地を傷めないように、湯の温度を変えながら2度~3度洗いとしています。縮み対策として事前に型紙をとって洗濯前後を比較しましたが、幸いに縮んだものはありませんでした。経年による退色があるもの、汚れ・黄ばみが残るものは、代替の生地で同じ縫製で作成しました。そして、きれいになった着衣は、併行作業の補修・補色が終わった人形に、小物とともにまた同じ方法で着せていきました。
開館時の状態にもどった人形は、9月第1週の展示替え休館期間に劇場に戻され、9月9日に再び皆さんの前に姿を現しました。
洗濯後の着衣整理
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悦子のお母さん 脱衣・帯周り
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洗濯後の衣装一覧
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※実際の人形修復を担当した北原須美子さんから提供いただいた報告に基づいています。
※現代の価値観に合わせるため、着衣を変更した人形もあります。
増井 正哉(大阪くらしの今昔館館長)