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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

安心して住み続けるために

左から(株式会社シーエムシー 一級建築士事務所 部長・木造建築士)山林誠二さん、
施主の森下義照さん・森下富美代さん

戦前に建てられた木造2階建てに暮らす森下義照(もりしたよしてる)さん、富美代(ふみよ)さんご夫妻。家族で住み継いできたこの家を、耐震改修したという。設計・施工を担当した株式会社シーエムシーの山林(やまばやし)さんも交え、木造住宅の耐震化について聞いた。


かつては七軒長屋だったが、どんどん解体されていったという。40年ほど前に改築をした後、多少のリフォームはしたものの耐震化はしていなかった。そんなお二人が耐震化を考えたきっかけは、娘さんとお孫さんに「壁にひびがあるけど大丈夫?」と心配されたことだった。

 


耐震化についてはまったく知識がなかったというお二人が、最初に相談へ行ったのは区役所。区の広報誌に耐震化の補助制度が紹介されていたのを、富美代さんが覚えており、区役所を訪ねることにしたという。


区役所で相談し、大阪市都市整備局 耐震・密集市街地整備受付窓口へつないでもらい、本格的に工事へ向けて動き始めた。

 


工事業者は、自分たちで決めなくてはならない。お二人はたくさんの資料を見比べて、株式会社シーエムシーに依頼することを決めた。決め手は「耐震改修工事の実施件数が多い業者だったから」と義照さん。工事方法についても「全然わからないので、説明を聞いてお任せした」という。


大阪市の耐震改修工事補助を利用する場合、「耐震診断※の結果、所定の耐震性が不足していると判断されたものであり、耐震改修設計※が実施されていること」という条件をクリアしなければならない。森下さんの場合も、まずは耐震診断を行い、決められた指標を超える耐震設計をする必要があった。

 ※耐震診断、耐震改修設計の補助もあります。

 

 


山林さんは「耐震診断では建物が大地震(震度6強程度)に耐えることができるのかを調べます。屋根、天井、柱、壁、床下など家のつくりや、状態も確認して建物の強さを上部構造評点という指標で示します」と話す。


森下さんの家は診断の結果、4段階ある指標のうち最も低い評点だった。「東西方向を支える壁が少なくバランスが悪いことが評価を下げました」と山林さんはいう。結果を受けて、改修工事では壁を増やし、屋根を土葺の瓦からスレートという軽い素材に葺き替えることとなった。


木造住宅においては他にも気を付ける点があると山林さん。「神戸の震災でもシロアリ被害のある家屋の多くが倒壊したという調査結果があります。今回の工事でも蟻害が出ないよう床下には薬剤を撒いています。耐震診断の段階で蟻害の有無は必ず確認しています」と教えてくれた。


耐震改修工事は約二ヶ月。その間、森下さんたちは自宅で暮らしながら工事が進められた。荷物の移動は山林さんたちがやってくれたので、不自由があるとしても住み慣れた場所で生活し続けられるメリットは大きかった。幸いにも、富美代さんのご実家がすぐ近くにあったため、風呂を借りたり、荷物を預けたりできたという。

 


補助金に関する手続きについては「委任状をいただいてシーエムシーが申請書提出などを行いました」と山林さん。森下さんらも必要な書類を取りに行ったりしたが、大部分を委ねることができたという。「区役所でも、大阪市の窓口でもとても親切にわかりやすく説明してもらいました」と富美代さん。義照さんも「どうすればよいかわからない状態からスタートした。役所や山林さんと話をしていくうちに安心できて、任せられると思えた」と言います。

 

 

無事に耐震改修工事が終了した今の気持ちを聞くと、義照さんは「屋根が落ちないかなど心配していたが、もう大丈夫だと思う。ほっとしている」と話してくれた。「台風や地震で少し揺れるたびに怖かった。地震も台風もこれからもっと大きいものがくるみたいだし心配でしたが、安心しました。娘にも長生きしいやと言われています」と富美代さん。

山林さんは、「大阪市の補助は対象範囲が広く内容も充実している。家の状態、強さを知ることが防災の第一歩なので、補助金などを活用してまずは耐震診断を受けてみてほしい」と語った。

 


 


 

 

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