シニアライフに備える住まいとは。
おひとりさまと住まい 第1回
SSNおひとりさまネット 殿村美知子
家族や仕事などに忙しくしていた若い頃、住まいはそれらと同様に暮らしを形作る要素の一つでした。そこを卒業してシニアになると、時間の使い方や過ごす場所が変わり、住まいは暮らしのメインステージになっていきます。ならば、住まいを単に帰る場所ではなく、快適なシニアライフを支えるものにしたい。自分の思い次第でどうでもできるおひとりさまの特権を活かして、将来に備える住まいのポイントを考えてみましょう。
住んでいる地域を活用する
暮らしのメインステージとしては地域も重要な役割を果たします。シニアおひとりさまは地域とつながりを持つことで、孤立を防ぎ、自然な近隣の見守りや災害時の支援など安心環境を創ることにもなります。住んでいる地域の状況や特性をよく知って、早くから地域のいろいろなことに参加して人脈を広げておきましょう。
まずは役所や公的機関の情報を収集しましょう。住んでいる市町村はシニアに関心が高いか。シニアが利用できる制度やサービスにはどんなものがあるか。
また、街を歩いていて、シニア向けのサービス、例えば食事の宅配や訪問リハビリ、さらに介護関連のデイサービス、介護事業所などをよく見かけるか。
自治会・町内会などはイベントや活動を活発に行っているか。もしイベントがあるならぜひ参加してみましょう。一度でも参加するとさらに深く状況を知ることができます。シニアの多い集まりに若い世代が参加すると「お若くていいわねえ」と大事にしてもらえるメリットもあります。
自分に優しい住まいにする
おひとりさまは住まいを自分の思い通りにできる一方で、暮らしを一人で支えなくてはなりません。その両方からシニアになった自分に優しい住まいを考えてみましょう。
基準になるのは暮らし方です。自分の暮らし方を知るには、例えば食事はダイニングよりリビングでの方が多いなど、自分が今自然とやっているスペースの使い方を知ることです。
その上で、シニアになったらどのスペースを使うことが多くなりそうか。昼間も家でいろいろなことをするとすれば、どんなスペースが快適か、寝室は今のままで不便はないか。住まいありきではなく自分の暮らし方を中心にどんなスペースがあるといいか、一度考えてみませんか。
シニアになって自立度が低下してきた時は住まいに機能を補ってもらいましょう。その場合は設備が重要です。食事づくりをもっとラクにする設備とは? 足腰が弱ってもトイレやお風呂を安全に使うためには何が必要?
シニアになった自分が快適と思えるにはどんな生活空間であればいいのか、それがわかれば、リフォームや転居など、より自分に合った選択ができます。
おひとりさまだからできる「柔軟な住むとこ選び」
一時「終の住処」という言葉がよく聞かれました。これは死を迎えるまで住み続ける住まいというような意味ですが、実はシニアこそ、住まいを固定するのでなく、柔軟に変えるという発想を持つべきではないのでしょうか。
理由の一つが住宅の老朽化です。戸建てでもマンションでも持ち家が老朽化することでトラブルやメンテナンスの手間、費用が発生します。そこで、持ち家から賃貸住宅へ、あるいは戸建てから築浅の集合住宅になど、より負担の少ない方へ住み替える選択をするシニアも多くいます。
また、医療機関や買物施設などの生活環境が便利なところへの転居も思った以上に暮らしの質を高めてくれるでしょう。
そして、「最期まで自宅で」と望んでも、おひとりさまではどうしてもムリな場合があることも念頭に置いておきましょう。重度介護になったら高齢者住宅・施設に入所した方が安心して快適に過ごせるかもしれません。その可能性も視野に入れて、元気な時から調べておくことも必要です。
住まいに限らず、何事も固定的に決めつけないで、自分に起こることを受け止めて柔軟に対応するという覚悟を持つ。それが家族のいないおひとりさまに必要な備えの基本ではないでしょうか。