大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」設立目的
大阪の都市史をひもとくと、古代の「難波京」、中世の「石山寺内町」、近世の「大坂城下町」、近代の「大大阪」など、魅力的なキーワードにみちています。これらはいずれも先進的な都市モデルを創造したという点で、わが国の歴史においてきわめて重要な意味をもっています。しかし、都市としての大阪の歴史を情報化し、発信する努力は、これまで必ずしも十分ではありませんでした。21世紀を迎えた現在、大阪で育まれた都市文化の再評価は、大阪の未来像を探るうえでも、大きな課題になっています。とりわけ、現代都市の根幹をなす「居住」に焦点をあて、先人の知恵と工夫を明らかにすることは、現代と未来を考える上で必要不可欠なことです。
こうした中で、1990年『大阪市総合計画21』において「住まい情報センター」の構想が位置付けられ、翌年の大阪市住宅審議会では「大阪市内の住宅に関する情報サービスや相談、さらに新しい住まいや大阪の都市居住の歴史などについても知ることができる総合的な住情報拠点として <(仮称)住まい・まちづくりセンター> を創設する」と述べられています。この構想を基本として、住情報機能の提供と展示機能をあわせもつ施設の計画が進められました。「大阪市立住まい情報センター」は1999年11月に開設され、まず住情報機能を担う「住情報プラザ」がオープンし、その1年半後の2001年4月に「大阪市立住まいのミュージアム」が誕生しました。
大阪市立住まいのミュージアムは、「住まい」を中心に、「暮らし」から「まちづくり」までをテーマとする、歴史系のミュージアムです。大阪の都市居住の歴史を楽しく学ぶ中核施設として、また「住むまち・大阪」に対する愛着とイメージアップを図る住情報の拠点として、「住まい情報センター」の活動の一翼を担っています。
基本理念
1)「住まい」をテーマとした日本初の専門博物館
「住まい」を中心に「暮らし」から「まちづくり」までをテーマとして扱う歴史系の専門ミュージアムです。歴史・民俗・考古・美術が満遍なく展示されている総合博物館ではなく、住まいというテーマをもった日本初の専門博物館です。
2)高度な学術性をふまえ、市民の目線に立って歴史を読み解く
歴史の復元には、学問的な裏付けをもった監修が必要です。住まいのミュージアムの展示は、学芸員が細部にわたる復元の考証にあたり、各分野の専門家の監修を受けたものです。さらに、専門家の満足にとどまるだけでなく、市民の目線に立って歴史を読み解き、その知的好奇心にこたえるように、展示の手法や装置に工夫を凝らします。
3)見せる展示を超えた、体感する展示
「近世大坂」の展示では、復元した町家の生活道具や調度類はすべて実物資料を用い、また一日の変化や季節感を演出することによって、展示ケースのガラス越しに見せる従来の展示にはない臨場感を出します。さらに上方古典芸能の公演やボランティア活動によって、江戸時代の町の賑いを再現し、「体感する展示の実現」をめざします。
4)「住まいと暮らし」の情報交流拠点として集客型ミュージアムをめざす
集客都市をめざす大阪市の中で、他の博物館施設と連携した活動をおこない、「住まいと暮らし」をテーマにした専門ミュージアムとしてその一翼を担います。また大阪から全国に情報を発信することで「住まいと暮らし」の全国的な情報交流拠点をめざします。