相談員からのアドバイス「住まいを売りたいとき」
住まいを売却するには、宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)との媒介契約、買主との売買契約・残金決済などのさまざまな手続きが必要になりますが、まずは、売却の理由や資金計画等について整理し、住み替えの時期を検討することが大切です。一般的な売却の流れをみてみましょう。宅建業者に売却を依頼する場合と、買主と直接売買契約をする場合では手続きが異なりますが、ここでは宅建業者に依頼することを前提に記載しています。
「相談員からのアドバイス」は、住まいに関する相談事例をもとに一般的な参考情報をとりまとめています。(断定的な判断材料等を提供するものではありません)
- 買換え
- 情報整理
- 登記簿
- 価格と諸費用
- 宅建業者 など
- 査定依頼
- 売出価格 など
- 契約の種類
- 告知書
- 契約不適合責任
- 境界
- 契約解除 など
- 内覧準備
- 買主との交渉 など
- 契約の流れ
- 契約書記載事項
- 必要書類
- 必要費用 など
- 決済、引渡しの流れ
- 必要書類
- 必要費用 など
1 情報収集
売却の理由、時期、買換え等の条件についての整理
- 売却の理由を整理したうえでその時期について検討し充分な準備をしましょう。
- 住み替え先の検討については、"住まいを買いたいとき"、"住まいを借りたいとき"、"知っておきたい住まいの情報"も参考にしてください。
- 売却が思うようにできなかったときには、宅建業者が下取りをしてくれる場合もありますが、希望価格よりも大きく下回るのが通常のようです。それぞれの方法のメリット、デメリットを考慮し、計画通りにはいかない場合のことも考え資金計画を検討し、特に、売却物件に住宅ローンが残っている場合は慎重に進めていきましょう。
- 住宅の買換えの場合には、売却と購入のタイムラグが発生してしまうため、購入を先行するのか売却を先行するのかなどを考慮して進めていかなければなりません。そのような場合、以下の方法が考えられます。
①購入を先行する
- まず住宅を購入し、ゆっくり売却する
- 資金にゆとりがないとできませんが、売り急ぐ必要がありません。
- 住宅を購入時に「買換え特約」をつける
- 「買換え特約」とは、購入物件の契約内容に、「指定期日までに、あらかじめ決めた価格以上で売却できなかったとき又はその売却代金が受領できなかった場合には、本契約は消滅する」などの条件をつけること。もし売れなくて購入物件の契約が消滅しても、この特約によって支払い済みの金員は返還されるので安心です。
②売却を先行する
- 住んでいる住宅を先に売却し、売却代金を確定してから購入物件を探す
- 売却代金が確定するため、購入のための資金計画が立てやすくなりますが、購入物件がみつからない場合や引渡しまでに時間がかかった場合、仮住まいの費用(家賃や引越し費用等)が必要になります。
当センターで開催している専門家相談(ファイナンシャルプランナーによる資金計画相談)の利用も検討しましょう。 |
売却物件についての情報整理
- 所有している土地と建物についての情報を整理しましょう。
- 今までの暮らしを思い出しながら、家の中や周囲をじっくりと観察し、情報を集めましょう。庭石や木など、残すものと撤去するものについても整理しましょう。
住まいの歴史を思い出す・部屋の中や周囲の確認
- これまでの増改築、修繕の履歴(箇所と時期)
- 水害や地震時の被害状況(最近のゲリラ豪雨、積雪状況等)
- 雨漏りやシロアリの被害の有無
- 庇や雨樋の越境の有無
- 隣家との覚書、町内会・自治会との協定
- 近隣環境(工場、葬儀場、電波障害等)
- 隣地から埋設管(ガス管や給排水管等)を引いている、隣人の埋設管(ガス管や給排水管等)を通している等
- その他、アピールできそうな点についても考えてみましょう!
設備機器(付帯設備)の状況、取扱い説明書を確認
- 給湯器等の設備の不具合、耐用年数、取扱い説明書の有無
- 特定保守製品の有無等
登記事項証明書(登記簿)を確認
- 登記事項証明書(登記簿)を取得する
- 未登記の部分の有無
- 抵当権等の担保権の有無
- 共有者がいる場合は全員の意思確認(売却するには全員の同意が必要です)
- 登記上の住所と現在の住所が異なる場合は住所変更登記が必要等
登記簿、登記済証、権利証、登記識別情報・・・とは
【登記簿】【登記事項証明書】【登記簿謄本】とは?
- 不動産の取引をするためには、権利関係等の調査が必要になります。【登記簿】(登記記録が記録されている帳簿)を登記所(法務局)に備えることでそれを可能とし、取引の安全と円滑化を目的として不動産登記制度が設けられています。
- 【登記簿】を確認するには、法務局に出向き(オンラインでの取得、郵送による取得も可能)、【登記事項証明書】を取得します。平成20年7月にすべての法務局がコンピューター化され、登記事項がコンピューターに記録されています。その内容を印刷し証明したものが【登記事項証明書】です。コンピューター化に移行する前は、登記事項を直接登記用紙に記録し、その用紙を複写して証明をしていました。これが【登記簿謄本】です。
- 【登記事項証明書】【登記簿謄本】と名称は異なりますが、証明する内容は同じです。
【登記済証】【権利証】【登記識別情報】【登記完了証】とは?
- 以前は、所有権移転等の登記申請を行った際、その登記が完了したときに法務局が、申請書に添付された申請書副本等に「登記済」の印を押し、登記名義人(買主等)に対して返還していました。これが【登記済証】で、一般的に【権利証】と呼ばれています。【権利証】という呼び名は【登記済証】の俗称です。
- オンライン申請等の必要性から不動産登記法が改正(平成17年施行)され、【登記済証】の制度は廃止になり(所有している登記済証はこれまでどおり登記の申請に用いることができます)、【登記識別情報制度】が導入されました。
- 【登記識別情報】とは、登記の申請がなされた際に登記名義人となる申請人に通知される、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号です。登記が完了すると、【登記識別情報通知書】(登記識別情報を記載した書面。申請人が通知を希望しない場合は通知されない)と【登記完了証】が交付されます。
資料等の確認
すべての資料が無ければ売ることができないということではありませんが、以下の資料は後の価格査定依頼の際にも用意しておくとよい資料です。
- 建築確認申請書の副本(申請書と図面)、確認済証、建物によっては中間検査済証、検査済証(左記書類の再発行はできませんが、保存されている年代のものであれば、市役所で建築計画概要書の閲覧や台帳記載事項証明書を取得することで建築確認や検査を受けたかどうかの確認はできます)
- 購入時の売買契約書や重要事項説明書の有無
- 権利証(登記済証)または登記識別情報通知書の有無
- 設計図書の有無
- 前面道路の種類(建築基準法上の道路)や幅(市役所で確認できます)
- 境界確認書、土地の確定測量図、建築協定書、近隣との覚書、瑕疵担保責任保険の付保証明書の有無等
分譲マンションの場合は以下の内容についても確認しましょう
- 管理規約や使用細則、今までに開催された総会資料等
- 大規模修繕の計画時期(長期修繕計画)
- 近々に修繕積立金や管理費の値上げの予定があるのかどうか
- 給排水管等の不具合、リフォーム状況(管理規約による制限の有無)
- ペット飼育不可等の禁止事項等
売却価格と諸費用
- 価格についての情報を収集するのは難しいことですが、近隣の物件の口コミ情報や折り込み広告の収集、インターネット広告や以下のホームページ等を参考に情報収集してみましょう。
売却にかかる主な諸費用
- 仲介手数料
- 宅建業者が課税業者の場合の仲介手数料(売買価格が400万円を超えるときの簡易計算法)=(消費税抜き売買価格×3%+6万円)+消費税
- 低廉な空家等の売買又は交換の媒介や代理における特例について(令和6年7月1日施行)
- 印紙代
- 利益が出るときは所得税、住民税
当センターで開催している専門家相談(ファイナンシャルプランナーによる資金計画相談)の利用も検討しましょう。 |
- 住宅ローン等の抵当権抹消登記が必要な場合は抵当権の抹消費用(※)
- 登記上の住所を現住所に書き換えていない場合は住所の変更登記費用(※)
- 相続登記をしていない場合は相続登記費用(※)
- 測量が必要な場合は測量費用
- 住宅ローンの残債を完済した場合、ローン繰上げ返済の事務手数料(金融機関に確認)
※司法書士へ依頼する場合は司法書士の報酬も必要
宅建業者を探す
- 信頼のできる宅建業者を探すことが大切です。適正な売却価格を判断するためにも3社程度の候補会社を探してみるとよいでしょう。2社ではかけ離れた査定価格を提示されたときに判断が難しくなります。
- 宅地建物取引業を営むためには、免許(国土交通大臣免許・都道府県知事免許)が必要です。行政処分歴等のチェックもできる業者名簿は国土交通省の各地方整備局・都道府県の担当課などで閲覧できます。ホームページで公開されている情報もあります。
2 価格査定
上記で決めた3社程度の宅建業者に価格査定を依頼する
- 価格査定に必要な資料を宅建業者に確認しましょう。
- 査定価格の根拠については充分な説明を受けましょう(宅建業者は価格について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければなりません:宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)34条の2)。
- 査定価格とは、おおむね3ヵ月以内に成約が可能と思われる価格です。多くの経験に基づいた具体的な根拠がある、地元の情報をよく把握している(地元に強い業者)、親身で丁寧な対応等を見極め、依頼する業者を決めましょう。高い価格を提示している業者がよいとは限りません。適正価格で売却するために、宅建業者の選択は慎重に行いましょう。
- 売却活動を始めてから半年位を過ぎると売りにくい物件として扱われることも考えられます。
売出価格を決める
- 売却を依頼する宅建業者が決定すれば、査定価格をもとに売出価格を検討しますが、売りたい時期との兼ね合いも考え、宅建業者とよく相談しましょう。まったく同じ土地・建物というのは存在せず、取引の時期により価格は変動するので、近傍同種の物件と同程度の価格で売れるとは限りません。
- 売出価格の決定後、媒介契約を結びまます。
3 媒介契約
媒介契約を選択する
- 3種類の媒介契約の中から選択します。それぞれの特徴をふまえて選択しましょう。
- 媒介の依頼を受けた宅建業者には、媒介契約を結ぶことが義務づけられています(宅建業法34条の2)。
《宅建業者と売主・買主の関係図》
媒介契約の種類
《宅建業法、標準媒介契約約款による比較表》
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
媒介に係る業務 |
媒介に係る宅建業者の業務として3種類に共通する事項
|
||
業務処理の報告義務 |
1週間に1回以上報告 ※標準約款では文書又は電子メールのうちいずれかの方法による報告 |
2週間に1回以上報告 ※標準約款では文書又は電子メールのうちいずれかの方法による報告 |
なし |
指定流通機構への登録義務 | 媒介契約締結日の翌日から、5営業日以内に登録 | 媒介契約締結日の翌日から、7営業日以内に登録 | なし※契約により登録する場合は登録義務あり |
指定流通機構からの登録済証の交付義務 | 交付義務あり | 交付義務あり | 登録する場合は交付義務あり |
契約の有効期限 |
3ヵ月以内 更新は依頼者の申し出による 更新時も3ヵ月以内 |
3ヵ月以内 更新は依頼者の申し出による 更新時も3ヵ月以内 |
宅建業法上の定めはない ※標準約款では3ヵ月以内 |
他業者へ重ねての依頼 | できない | できない |
できる(注) (明示型の場合:他業者に重ねて依頼したときは通知義務あり) |
自ら探した買主との契約 (自己発見取引) |
できない |
できる(注) (通知義務あり) |
できる(注) (通知義務あり) |
- (注)費用の償還(実費)請求等の規定について、締結する媒介契約約款で確認しましょう
標準媒介契約約款(標準約款)とは?
- 媒介契約を標準化し、消費者保護を図ることを目的として国土交通省が作成している約款です。
指定流通機構・レインズとは?
- 国土交通省から指定を受けて、専任媒介契約等の対象物件の登録業務等を行う公益法人です。現在、全国に4法人(東日本、中部圏、近畿圏、西日本)が設立されています。指定流通機構が導入している情報ネットワークシステムを「レインズ(不動産流通標準情報システム)」といいます。宅建業者間で情報を交換することで広く取引の相手を探し、早期の成約を目指すことを目的としています。
媒介契約書・契約約款を確認する
- 媒介契約を締結したとき、宅建業者は、遅滞なく、媒介契約書を作成して記名・押印し、依頼者に交付します(宅建業法34条の2)。契約書の内容をよく確認しましょう。
- 宅建業法の改正により(平成30年4月1日施行)、媒介契約締結時には、既存住宅の場合、建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の交付が義務づけられています。
媒介契約書・契約約款の確認内容(例)
- 物件の表示
- 標準約款に基づく契約かどうか
(標準約款に基づかない場合は、標準約款と比較して内容をよく確認しましょう) - 媒介契約の種類
- 売出価格(媒介価格)
- 有効期間
- 宅建業者の義務と業務、販売活動の報告方法
- 依頼者の義務
- 契約解除、違約金に関する内容
- 報酬の額と支払い時期
- 反社会的勢力の排除等
インターネットでの住宅の間取り図や写真の公開、オープンハウス等、どのような広告活動を依頼するのかについても、媒介契約の前によく検討しておきましょう。不動産の広告については不動産業界の自主規制として「不動産の表示に関する公正競争規約」:不動産公正取引協議会連合会がありますので、その内容を売主も確認しておくとよいでしょう。(ご近所には広告を配布してほしくない等の要望があれば事前に伝え、広告方法についても媒介契約書に記載してもらうとよいでしょう。)
売却物件についての情報確認
付帯設備・物件状況等確認書(告知書)の活用
- 売主は、売却物件について知っている情報を買主へ伝える必要があります。その方法として、「告知書」を活用することが望ましいとされています(宅地建物取引業法の法令改正・解釈について「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」:国土交通省)。
- 売却後のトラブルを防ぐためにも、情報収集の段階で調べた情報を活用し、正確に内容を記載しましょう。
- 「告知書」にあらかじめ記載されている項目以外にも伝えておくべきことがないかを検討しましょう。
- 宅建業者から「告知書」の提示がない場合は活用について提案してみましょう。
契約内容を検討する
買主の候補がみつかり交渉を始める前に、契約条件の希望を整理しておきましょう。
契約不適合責任について
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、補修の請求(追完請求)等をすることができます。詳しくは、以下のウェブサイトをご覧ください。
既存住宅売買瑕疵保険について
- 既存住宅売買かし保険の利用を検討するのも一法です。中古住宅の検査と保証がセットになった保険制度で住宅専門の保険会社(住宅瑕疵担保責任保険法人)が保険を引き受けます。
境界確定・土地の面積について
土地の取引方法には、実測売買と公簿売買があります。
実測売買
- 土地の面積は、登記記録(登記簿)上に表示された面積と実際の面積とが異なる場合があります。事前に測量をして、すべての隣接地との境界について(公道等との境界:官民査定を含む)、隣接地の所有者の立会いのもと確認し、印鑑証明書を添付した実印のある境界確認書を交わし、確定測量図を作成するのが最も確実です(費用については売主が負担するのが一般的です)。
- 売買契約締結後、引渡しまでに土地を測量し、その結果得られた面積と登記記録(登記簿)上の面積に差異が生じた場合は、予め定めた1㎡あたりの単価で精算する取引方法もあります。
公簿売買
- 登記記録(登記簿)の面積で取引する方法です。実際の面積とは一致しないことがあっても精算を行わないことを条件に契約する取引方法です。
契約解除について
手付解除
- 売買契約と同時に買主から手付金を受取り、手付解除の規定を契約内容に入れる場合が多く、契約後に買主が一方的な理由により契約を解除する場合、買主は手付金を放棄することで解除できます(特別な理由は不要です)。
- 売主からは手付金を倍返しすることで解除できます。手付解除ができる期限は、「相手方が履行に着手するまで」とされていますが、履行の着手に至っているのかどうかをめぐりトラブルになる場合がありますので、個人間の売買契約においては、売主と買主が合意をして手付解除ができる期限を設けておくのが一般的だと考えらます。
ローン特約による解除
- 買主が融資を受けて購入する場合、その融資が否認されたときは売買契約を解除できるという特約をつけることが一般的です。
- この特約により契約が解除された場合は、受け取った手付金を返還する必要があります
反社会的勢力の排除
- 反社会的勢力排除のための標準モデル条項が導入されています。契約書に条文が入っていることを確認しましょう。
4 売却活動
内覧の準備をする
- 印象をよくするためにも、掃除を丁寧にしておきましょう。
- 宅建業者は物件についての情報をすべて知っているわけではありませんので、買主候補からの質問に対しては売主がこたえる方が確実です。内覧の希望日に合わせて、日程調整を行いできる限り立会うようにしましょう。
宅建業者からの報告を受ける
- 販売活動についての報告を受けます。媒介契約に基づき、報告を受ける頻度は決まっていますが、気になることがあれば随時たずねてみましょう。物件についての反響が少ない場合は、今後どのような対策を考えてもらえるのかなどについてもたずねてみましょう。
- 売主も、物件がどのように広告されているのか、その内容を確認しておきましょう。
買主との交渉
- 買主からの申込みが入れば、宅建業者を通じて価格等売却条件の交渉を行います。誰と契約をするのかは売主の自由ですが、契約まで至らない時期とはいえ、過度な期待をもたせて突然に申込みを断るなどの行動はトラブルになりますので注意しましょう。
販売活動の見直し
- 一定の期間が過ぎても反響が全くない場合は、価格の問題等、今後の販売活動について宅建業者とよく話し合いましょう。
5 売買契約
売買契約の流れ(例)
契約内容について売主と買主の間で合意に達すれば売買契約へと進みます。 売主・買主、宅建業者が集まり、おおむね以下のことを行います。
- 本人確認と売主、買主それぞれへの紹介
- 売買契約書の条文等の確認(読み合わせ)
- 建築確認申請書の副本(申請書と図面)、確認済証、検査済証、建物によっては中間検査済証、マンションの場合は管理規約等の写しの交付
- 契約書に署名、押印、印紙貼付
- 手付金の授受(領収書の発行)
- 宅建業者への報酬の支払い
(半額を契約時に支払うのが一般的です。領収書を受取ります。) - 今後の引渡しまでのスケジュール確認
買主に対する重要事項説明書、売買契約書を確認する
- 宅建業者は、売主へ重要事項説明をする義務はありませんが、売主も事前にその内容を確認しておくことが大切です。売主が提供した情報が正確に記載されているかを確認し、他に伝えておくべき情報はないかを検討します。売買契約書の内容についても事前に確認しておきましょう。
- 宅建業法の改正により(平成30年4月1日施行)、既存住宅の場合、重要事項説明の対象に「建物状況調査の実施の有無、建物状況調査の結果の概要」と「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況」(確認済証や検査済証の有無等)が追加されました。
- 宅建業法の改正により(令和2年8月28日施行)、不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が義務化されました。
売買契約書の記載項目(宅建業法37条)
- 契約書に記載すべき内容は宅建業法により規定されています。
必要的記載事項(必ず記載が必要な内容)
- 宅建業法改正により(平成30年4月1日施行)、既存住宅の場合、宅建業者が売買等の契約当事者に交付する書面の記載事項に「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について双方が確認した事項」を記載することになりました。
- 当事者の氏名と住所
- 宅地建物を特定するための表示
- 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
- 代金とその支払時期および方法
- 宅地建物の引渡しの時期
- 移転登記の申請の時期
任意的記載事項(定める場合は記載が必要な内容)
- 代金以外の金銭の授受に関する定めがあるときはその額、授受の時期、目的
- 契約の解除に関する定めがあるときはその内容
- 損害賠償額の予定または違約金に関する定めがあるときはその内容
- 融資のあっせんに関する定めがあるときは、その融資が成立しないときの措置
- 天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めがあるときはその内容
- 当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容
- 取引物件に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときはその内容
契約時に必要な書類(例)
- 本人確認書類(免許証・国民健康保険証等)
平成20年3月1日より全面施行された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)により、宅建業者は売主と買主の両方に対して本人確認を行う必要があります。本人特定事項とは、「氏名、住居および生年月日」です。平成25年4月1日施行の改正法により「取引を行う目的」と「職業」も追加されました - 印鑑(実印・共有の場合は共有者の実印も必要)
- 印鑑証明書(発行から3ヵ月以内。共有の場合は共有者の印鑑証明書も必要)
- 固定資産税・都市計画税納税通知書
- 建築確認申請書の副本(申請書と図面)、確認済証、検査済証、建物によっては中間検査済証、マンションの場合は管理規約等(契約の時点では重要な書類についてはその写しを引渡すことが多い)
- 権利証(登記済証)または登記識別情報通知書の提示
※契約書に貼る印紙や手付金の領収書自体は一般的に宅建業者が用意します。
※固定資産税・都市計画税の精算について
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点における固定資産課税台帳に所有者として登録された人が納税義務を負います。その義務とは別に、売主と買主の間で精算をします。関西では4月1日を起算日として日割り計算をするのが多い傾向にあります。
契約時に必要な費用
- 印紙代(売買価格に応じて金額が異なる)
- 仲介手数料の一部(半額を契約時に支払うのが一般的です。媒介契約書を確認しましょう。)
6 残金決済・引渡し
決済・引渡しの流れ(例)
- 登記記録(登記簿)を確認・・・司法書士が決済当日の登記内容を確認
- 司法書士が必要書類を確認。確認後、売主・買主は司法書士への委任状を提出
(抵当権抹消手続きが必要な場合は、金融機関の担当者が持参した抹消登記関係書類を司法書士に提出して確認) - 書類の確認を得られた後、残代金の授受
- 諸費用(固定資産税・都市計画税等、マンションの場合は管理費等)の精算
※引渡しまでの光熱費の精算を明確にしておきましょう。電気会社やガス会社等から後に受取る領収書はきちんと保管しておきましょう。
- 書類等を引渡す
- 鍵を引渡し、引渡しが完了した証として、売主・買主の双方で「売買物件引渡確認書」を取交わす(署名・押印)
- 仲介手数料の残額を支払う
(半額を契約時に支払うのが一般的です。領収書を受取ります。)
関連リンク
決済・引渡しの準備をする
売買契約の後は、残代金の受領と引渡しに向けた準備に入ります。
- 引渡しと決済は同時に行いますので、その日までには引越しをしておく必要があります。
所有権移転登記の準備
一般的には司法書士に登記を依頼しますので、必要な書類について司法書士や宅建業者に確認しておきましょう。登記記録(登記簿)の住所と現住所が異なる場合は住所移転の登記が必要となります。
抵当権抹消登記の準備
住宅ローンの残債がある場合、引渡し日に向けて余裕をもって完済ができれば抹消手続きも事前に行うことができますが、買主から受取る残代金で精算する場合には、金融機関に住宅ローンの残債額を確認し、抵当権抹消のための準備についてよく相談しておきましょう。抵当権を設定している金融機関が書類を準備し、決済・引渡しに同席して手続きを行うことになります。
実測売買・未登記部分がある場合
実測売買の場合、測量や境界確認を早めに行いましょう。未登記の建物部分がある場合の登記申請手続きも早めに行いましょう。
引渡し前の現地確認
物件の引渡しまでに、売主・買主、宅建業者が集まり、物件についての確認を現地で行います。境界の確認や設備の状況等、契約内容通りの引渡しができる状態かどうかを確認します。
その他の注意点
- ごみ出しのルール、町会・自治会のこと等、今後の生活における細かな内容についても伝えておきましょう。
- 「告知書」の付帯設備表の中で設備「有」として使用可能と約束した設備については、売主が使える状況で引渡す義務がありますので、契約時から引渡し時までの管理に注意し、状況を確認しておくことが大切です。
- 郵便物の転送届をしておき、その旨を買主に伝えましょう。既に同居していない家族への郵便物等についても事前に転送依頼をしておきましょう。
決済・引渡しに必要な書類(例)
- 権利証(登記済証)または登記識別情報通知書
- 印鑑(実印・共有の場合は共有者の実印も必要)
- 印鑑証明書(発行から3ヵ月以内・共有の場合は共有者の印鑑証明書も必要)
- 運転免許証などの本人確認書類(司法書士による確認)
- 固定資産税・都市計画税納税通知書
- 建築確認申請書の副本(申請書と図面)、確認済証、検査済証、建物によっては中間検査済証、マンションの場合は管理規約等
- 購入時のパンフレット、付帯設備の取扱説明書等
- 鍵(合鍵を含む)等
決済・引渡しに必要な費用(例)
- 登記費用
所有権移転登記の費用は買主が負担するのが一般的です。売買契約書を確認しておきましょう(住宅ローン等の抵当権の抹消が必要なときや、登記上の住所を現住所に書き換えていない場合の住所変更登記が必要なときは、登録免許税や司法書士に依頼する場合は司法書士報酬が必要になります)。 - 住宅ローンの残債を完済した場合、ローン繰上げ返済の事務手数料(金融機関に確認)
- 仲介手数料の残額(半額を契約時に支払うのが一般的です。媒介契約書を確認しましょう。)
売却時の税金
- 住まいを売却した場合、譲渡した翌年に確定申告が必要になります。
参考サイト |